ナナーズは人口5000人弱の川上村という小さな村に本店がある。この閉鎖商圏に450坪という巨大な売り場面積をもっている。だれが考えても不思議な店である。平成7年7月7日、ほとんどの人たちの"無謀だ!"という言葉を尻目に店をオープンさせた。
無謀だと言う言葉は正しかった。
なぜなら業界常識では1つには、人口4800人の閉鎖商圏では300坪の店は成立しないとされていた。
2つ目に30坪の店から一気に300坪にすることは不可能とされていた。
3つ目に人材がいない中での300坪の店舗の運営は不可能とされていた。
4つ目に他町村からわざわざ山奥にお客様は来ないとされていた。
5つ目に資金力がなければ大きな店は作れないとされていた。
私は「5つの不可能常識への挑戦」というタイトルの計画書を作り、商工会へ何度も足を運び、他のお店の人たちにも賛同を求めた。ばらばらに点在するお店を一か所に集めて商業集積を作ることが10年後の生き残りのために絶対必要だと訴えた。だれも耳を貸してくれなかった。当然であった。
結局単独で店を作ることになった
10年かけてようやくオープンにこぎつけた。23歳の時に計画を作りはじめ、結局オープンさせた時はすでに32歳になっていた。その間、日本にはモデルがなくアメリカにモデルを求めた。アーカンソー州ベントンビルという4800人の片田舎にでっかいでディスカウントストアーをつくって急成長している店があることを教わった。自分の環境と同じだと思えた。
それから年に2~3回のアメリカ通いが始まった。よく別な目的で行っているのではないかとからかわれた。当時日本ではあまり知られていない名前の店であった。
"ウォルマート"
その店は私にとって心の支えだった。
もうひとつ大きな心の支えになっていたのは、商業界のリテールマネージメントスクールの故川崎進一校長先生に教えていただいたフランスの経済学者ルネ・ユーリックの言葉
「大きな町には小さく作れ、小さな町には大きく作れ」
という普遍の言葉であった。
そして自分の全財産(わずかだけど)かけても悔いがないと私の決断の決め手になった最大の理由はこの川上村大深山という私の生まれ育った場所にある。ナナーズの前身は菊池商店であり、私は3代目である。私が今こうして経営をさせていただいているのはその先代の歴史があってのことである。
この3代がどれほど川上村の人たちにお世話になったかはとても私が簡単に説明できるものではない。私が説明できることと言えば、父が39歳で他界した時私は小学校4年生だった。母と祖母と3人の子供と多額の借金を残して逝ってしまった。その時点ですでに菊池商店は終わっていてもおかしくなかった。
川上村大深山の人たちに支えていただいたから今がある。
50メートルもない眼と鼻の先に資金力のあるお店がオープンしたときも大深山の人たちは菊池商店に来てくれた。この有難さはきっと経験したものでしかわからないかもしれない。私は生涯この感謝の気持ちを持ち続けるつもりである。
ナナーズをなぜ国道の通っているところに作らなかったのかとよく聞かれる。その方がもうかることは誰にでもわかることである。なぜこんな山奥に大きな店を作ったかと聞かれれば「自分の生まれたところだから」としか答えられない。理由は簡単に説明できるものでもなく、人間の人生観にかかわるものだから。
しかしながら経営にゴールというものはなく、今になってはすでにお客様に対しては不便な店になっており、ましてや川上村の人たちに何の貢献もできないでいることに申し訳ない気持でいっぱいである。
今後ナナーズを成長させていくためには外に投資をしていかなくてはならないことは当然である。ましてや近隣の人口が減ってきている昨今、ナナーズ本店への投資意欲は年々無くなることは私が一番わかっている。だから3年前に改装した。300坪をさらに450坪にし、2階まで作った。ナナーズをはじめに作った時以上の投資をした。人口は減っているというのに…。
また平成七年の時と同じことを言われた。
"あんなことして何考えてんだ!"と。
この投資は10年後のためのものであるといっても仕方ない。10年後にならないと理解してもらえないから・・・。
ナナーズの名前の由来をよく聞かれる。
この店を作る計画書を作っている頃に長女の奈那(ナナ)が生まれたのでそのまま名前にしただけ。今のナナーズのロゴマークの女の子の絵は5人目の子二女"美耶"と6人目の子三女"由華"をモデルにしたもの。ただそれだけのこと。でも6人の子供を産んでくれた女房にはとても感謝している。
あとはこれからナナーズを成長させることで、地域そして社会にどれだけ貢献できるかが私のこれからの人生をかけた仕事である。
私の生涯のテーマ
「不可能常識への挑戦」
私の最も大切にしている言葉
「商人の姿とは、一人のお客様のために誠実をつくし、一人のお客様の生活を守るために利害を忘れる。その人間としての美しさこそ本物の商人の姿である。今日のあなたの仕事は、たった一人でもよい、心の中で"ありがとう"と言ってくださるお客という名の友を作ることである」岡田徹先生(昭和32年没)の言葉
ホームページをリニューアルするにあたり
平成21年7月吉日
株式会社ナナーズ 代表取締役社長



